21-へんてこポーズ集団

我らぼったくり旅行団は
本日のメインイベント、天池に向かっていた。
ゴルフには行ったことがないが、ゴルフ場で
走ってそうな車に乗せられ、天池に向かう。

この頃になると我らぼったくり旅行団は
ある種の連帯感を深めていた。
なんてたって私達は急な乗務員のぼったくり要求に屈し、
泣く泣くお金を払った間柄である。
「遠くの親戚より、近くのぼったくり旅行団」とは
よく言ったものである。

次第に参加者の名前を覚えだした人民たちは
私を渡辺の中国語読みである「渡辺(ドゥービェン)」と
呼ぶようになり、私が一人変な方向に歩いていくものなら
周りから、「ドゥービェン!!」と叫ばれように
なってしまい、これにはまいった。

10分も走っただろうか。
高地の涼しい空気の中、次第に絶景は姿を見せた。


澄み切った空気の中、目の前には空の青を
映す大きな青い泉、そして遥か向こうの
山々の中には雪山も見える。
なんと神々しいのだろう。

そんな絶景の前で人民達はといえば

もちろん大撮影大会開始です!

それにしても何なのですか?
この昭和後期のバブルがはじける前の日本のようなポージングは?
絶景を前に嬉しいのは分かります、私も嬉しいです。
でもなんでこんなポーズをするのですか?
私にはさっぱり意味が分かりません。

変なポージングをしているグループは
これだけではありません!たくさんいます!
もうこの際、ポージングにタイトルでも
つけてやろうではないか。

タイトル「私、初めてカレシができたの!」

タイトル「でかした!妹!」

タイトル「私のカレシになってくれる人、ハーイ?」

タイトル「私でよければ!!!!」

・・・。

これは何をしているのですか?
もしかして、もしかしてだけど、元気玉ですか?
地球上のみんな!オラに元気をわけてくれ!っていう
黄金色した髪したあれですか?
まったく理解に苦しみます。

「ドゥービェン!ドゥービェン!」
私が絶景よりも、絶景と嬉しそうに写真を撮る
人民達を撮っていると私を呼ぶ声がした。
声の主は、バスで席が隣になったおばさんだ。

「なんですか?」

「ドゥービェンも写真を撮りたいでしょ?
 あなたと景色の写真を撮ってあげるよ。
 カメラを貸して!」

「やっぱり、手を天に向かって広げたり、
 腕を組んだりしてポーズをしなきゃだめですか?」

「あたりまえじゃない!それが写真ってもんよ!」

「だったら結構です!私はいわゆる写真が嫌いですから!」

そういうと変な人ね!とおばさんは
言い残し去って行った。

それにしてもだな、私のカメラの中には
目の前の絶景の写真より、中国人の個性あふれる
ポージングの写真のほうが多くなってしまった。
まったく悩ましい。

絶景の後は少しお寺で休憩しましょ!というわけで
向かった先は、階段!階段!階段!のお寺。

ぎょえー。ほんとに登るのかよと思いながらも
登った先は普通の道教のお寺だった。
唯一、変だったのは、やたらとお線香がでかかったことぐらい。
え?どうしてでかいのかって?

知らん!自分で調べてくれ!

ここで自由時間をすごした後、
我らぼったくり旅行団の天池ツアーは終了です。
「さぁみなさんバスに乗りましょう。」
そう促され私達はバスに乗る。

長かった天池ツアーもこれで終了かと思うと
少し寂しい気がした。
このぼったくりバスツアーはつっこみどころが
多かったが、なんだかんだ楽しかったのだ。

一時間後、皆寝静まったバスが駐車場に止まった。

ウルムチの街かと思い降りてみると
どうやらウルムチの郊外のようだ。
ここで降りて後は自分で帰れというのだろうか?
中国語の説明を聞き取れなかった私が乗務員に聞きに行くと
ここで買い物をしないとバスは発車しないという。

最後の最後まで金を落とせとな?
すさまじい商魂である!
私は中央の大黒様のような彫刻を買おうか買うまいか
最後の最後まで迷ったが、結局買わなかった。

彫刻なんていらないよ。
だって私の中には既に旅行団のみんなとの
素敵な思い出が刻まれてあるんだから!
思い出はお金では買えないんだから!

そんなことを考えつつ、バスに戻り
中国人へんてこポーズシリーズの写真を見ながら
なんだこのポーズはと、私は一人ほくそえむのだった。