20-我らぼったくり旅行団

「中国にあるスイス。」

中国人はウルムチにある大自然をそう形容し自慢するという。
私はガイドブックに載っていたその言葉に惹かれ、
忙しい美女探しの合間をぬって、旅行社を訪れた。
旅行社と言っても、バス停にビーチパラソルを広げ、
簡単なベンチと机を置いただけの店だ。

「中国のスイス、天池に行きたいんだけど。」

私がそういうと中央アジアの血を
ひいてると見える顔の濃いその男は
満面の笑みでツアーのファイルを広げた。

「兄貴!チケット、バス代込みで一番安いのは
 200元(2600円)です。昼食もついてますよ!」

中国で旅行は富裕層や中間層のみのものなのだろう。
中国の物価からしてかなり高いが、
それもガイドブック通りなのですぐにサインしそうになったが、
一応最後に聞いてみた。

「これは外国人価格なの?」

「兄貴〜。まったく何を言いますか〜。
 これは私ら中国人も同じ値段ですよ!」

「そう?じゃあすぐそこの他の旅行会社の値段も
 確認してから買うよ。じゃあね!」

「兄貴!待ってください!他の店もみな同じ値段ですよ!
 ほら!ここにサインしてください!ね?」

そのなかなかのイケメン男が人懐っこい
笑みを浮かべるので、私は不覚にもサインしてしまった。
女はこうして悪い男に騙されるのだろう。

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翌日、バス停に行くと私は一番乗りだった。
20分もしないうちにバスはほぼ満員になり出発した。
バスガイドはどこか影のある大学生のような女の子。

一時間くらい走っただろうか、
バスは一軒のスーパーの前で止まった。
どうやらトイレ休憩らしい。

しかし、10分経っても20分経っても発車しない。
おかしいなと思って外を見ると、
乗客20人程とバスガイドがなにやらもめている。


前に座ってた、さえない韓国人みたいな顔の中国人の
女子大生二人に、何が起こっているか聞くと、
どうやらバスガイドがここに来て天池のツアーを
続けるなら、さらに一人当たり100元(1300円)
払えと言っているという。

何!!

合計すると300元(4000円)ではないか!
4000円もするなら家でアルプスの少女ハイジのDVDを見ながら
クララが立ったごっごをするほうがましだ!

「でもなんで君達はあの輪に加わって抗議せずに
 のんきにアイスを食べてるの?」

私が女子大生に聞くと彼女達は、言った。

「私達はバス代だけ払ってるだけで、ツアーじゃないの。」

どうりで。

私はとなりのおばさんにも話しかけて情報収集に努めた。
「もともとこのツアーのチケットはいくらだったんですか?」

「えーと、確か一人180元よ。それにさらに100元払えと
言ってるのよ。信じられないわ!」

「一人180元?ほんとに?」

「そうよ、あなたは一体いくら払ったのよ?」

「200元だよ。20元(260円)ぼられたよ!」

20元ぼられた上にさらに100元払えだと?
まったくあの野郎〜。大日本帝国なめるなよ!

私は外に出て口論を眺めた。
さらに100元払うなら今から帰る!という客が続出している。
そのバス代をどうするかで、さらに揉めている。

私はもう100元については諦めていた。
それが奴らの汚い手法なのだろう。
100元けちって、いまさらウルムチに戻っても何をするのだ。
しかし、外国人料金でないといいながら
外国人料金をふっかけられたのだけは許せない!

私はバスガイドに歩みより、
私はこのツアーに200元払ったぞ!というとガイドの女は、
「知ってるわ!ちょっとまって!ほら20元よ!」
とすんなり差額を返してくれたもんだから
私の怒りはある程度収まってしまった。

私は怒れる中国人を尻目におとなしくバスに戻った。
結局、話がついたのは一時間後ですっかり昼をまわっていた。
乗客から100元をまきあげたガイドは
何事もなかったかのようにガイドを続けた。

バスはまもなく天池に到着した。
拡声器で話される早送りしたような中国語は
全く意味が分からないが私はガイドに付いていった。
チケットを渡され、チケットオフィスを通る。

まもなく、目前に絶景がまっていると思うと胸が高鳴る。

目の前に広がる絶景を期待して
連れて行かれた先は、小さな木造の古びた小屋。
その五秒後にはパイプ椅子に座らされ
白衣を着たおばさんから漢方薬の説明聞いてました。

その後は、漢方薬の大即売会です。

その後はなんと専門家に持病を相談できちゃうんです!

大自然はどこいった?なんて
野暮なこと聞くのはここではノンノン!
だって私達、三度の飯より漢方薬が大好きなんですもん!

それにしても君、ズボンなかったのかな?

次に連れて行かれたのはカザブ族のテント。

テーブルにはいろんなおつまみが置いてあり、
お茶を飲みながらつまめる。
カザブ族のショーはすぐに始まった。

お姉さん踊る、踊る。

お兄さん歌う、歌う。

人民加わる、加わる。

そして盛り上がりは、、、

最高潮を迎えるのです!!!

そんな最中・・

老人チーン、チーン。

おばぁ 「あたしゃ付き合いきれんよ」
おじぃ 「おらもだ。」

-_-

踊り疲れた後は、おいしい昼食です!
たくさんありすぎてもう何族か分からないけど、
連れて行かれた先はどこかの民族の野外レストラン。

だされたのは日本の味に似た優しい味のピラフ。

私は美味しくたいらげたのですが・・・
中にはこんな方もいらっしゃいました。

全身でまずいアピールする人民。

目が完全に死んでますね。チーン。

ご飯のあとは、いろんな民族の住む
テントの近くで撮影大会ですよ!

いろんなポーズで記念撮影する人民に

一族総出で記念撮影する人民達

私は暇そうにしていたどこかの民族の女の子に
声をかけ写真を撮らしてもらったのだが

それを見ていた人民達が、大撮影会を始めました。


女の子は次第に疲れてきたようで
露骨にしんどそうにため息をつきはじめた・・。
なんだか悪いことしてしまった。

そして私達は再びバスに乗せられ、
ようやく今日のメインイベント、
中国のスイス・天池に向かった。

我等、ぼったくり中国旅行団の旅は
最大のフィナーレを迎えようとしていた。

(長いので続く・・)