1-美女の谷に魅せられて

いつだっただろうか、私が最初に『美人谷』の存在を知ったのは。

私はネットか何かで中国、かつてのチベット
美女が多く住む『美人谷』があるという事を知った。

中国の歴史書にも、元の侵攻によって
滅ぼされた西夏王朝の王妃や多くの美女が
着の身着のまま、現在の美人谷と呼ばれている辺りに逃げ込み、
やがてそこに住みついたと記述がある。

うーむ。これは興味深い!
本当にそんな現代の竜宮城のような所があるのだろうか。
そして、そこには本当に美女がいるのだろうか。
これは私自ら行って検証しなければならない!

私の美女探しの旅にかける情熱は日に日に熱を増していったが
私には美女を探しに行く事に、いささか葛藤もあった。
美女を探しに行くなどという軟派な理由で旅をしても
いいのかという葛藤と、付き合っている彼女を何週間も
ほったらかしてチベットに行っていいのかという葛藤である。

私は外国の社会に潜む闇にスポットライトをあて
それを暴き出すようなノンフィクションの作品が好きだ。
そして私自身もそんな作家に憧れていた。
私も彼らのように、何か社会にとっても、
自分にとっても意味のあるモノを書きたかった。


しかし、実際私がやろうとしている事は、
チベットの山奥に『美女』を探しに行くことである・・。


あちゃー・・。


私は理想と現実のギャップにしばらく悩み続けた。
毎日、頭にチベットを思い描いては自分の手で消していた。
私は元来、生真面目な性格なのだ。


しばらくそんな日が続いた。


私はそんなある日、いつものようにチベットに思いを馳せつつ
自分の部屋から、ふと空を見上げた。
そこには青空の中に一つの大きな雲が見えた。

雲の形が何かに似ている・・。





なんだろう・・何かに似ている・・。






あっ!!アレに似ている!!!






どうやら、間違いない・・・。






これは中国だ!チベットだ!

どうやら天におられる神は、私をチベットに送りこみたいらしい。
だから、こうして雲にメッセージを託し私に送ってきているのだ。
神がそこまでするなら、私はチベットまで行こうではないか。
それが神の意思なら、どうして反対できますでしょうか?
彼女もきっと理解してくれるだろう・・。


4月、私は編入学した通信制大学を2年で無事卒業し、
仕事も5月に繁忙期を過ぎたので、たった一人で
卒業旅行をするという口実で旅にでる事にした。
行き先はもちろんチベット!しかも山の奥の奥だ!


私の「神の使者」としての美女探しの旅は今こうして始まった。

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テーマソングは美人谷出身で日本でも活躍するalanさん!
http://www.youtube.com/watch?v=p7P-CIytM_c&feature=related