9-美女探し大作戦 その2

美女を探しに来て、美女を一人も見つけずに帰れるわけがない!
美人谷へ行く起点となる丹巴の町に戻った私は、
美女捕獲前線基地に戻り一人作戦会議を開いた。

そういえば美人谷にいたおばば達は、
美人谷の美人はみな町に行ったと言った。
もちろん成都九寨溝などの都市を指しているのだろうが、
美人谷から一番近い「町」といえば紛れもなくこの丹巴である!
とすれば、丹巴にも美人がいるはずだ!
いや、絶対いるぞ!

私はすぐに日本から持ってきたノートに
中国語でこう書きなぐった。

私は日本から来た旅行者です。
私は丹巴(美人谷)出身の美人や、将来の美人を探しています。
もしよかったら、写真を一枚撮らせてもらえませんか?
お願いします。

これを町行く美女に見せ、写真を撮らせてくれるようお願いするのだ。
目標はとりあえず美女15人!
15人も撮れば、全国に5人いる私のブログ読者も
きっと満足してくれるだろう!

そうと決まれば、私は黄色いウィンドブレーカーから
極力目立たないように白いシャツに着替えた。
というのも公安は昨今のチベット人の暴動や抗議に
神経をとがらせ、あちこちで厳戒なパトロールをしているのだ。
変な黄色い服を着た不審な男がカメラを持って
怪しい行動をしていると職務質問
受けるなんてまっぴらごめんだった。

準備の整った私はさっそく町にくりだした。
丹巴の町は端から端まで歩いても直線距離で2KMくらいだ。
私はまず丹巴の町の端に行き、のんびり歩きながら美女を探した。

探し始めて20分、丹巴一の繁華街らしき
ショッピングエリアの洋服屋で働く一人の美女を発見した。
長い髪を茶色に染めた綺麗な女性で
服装も2千メートル級の山の上に生息している女性とは
思わせないくらい洗練されている。

よし!突撃だ!

いや〜でも彼女まだ仕事中だし、他の客もいるし。。
というか声をかける勇気あんまないし・・。
行きずら・・。

私はとりあえず、彼女を保留し店の名前を覚えた。
店が開いている限り彼女はココにいるだろう。。

それにしても、何で私はこんな性に合わないことを
無給でしているんだろう。
声をかけるのが、おばばにならまだいい。
おばばには人として興味はあっても、女性として興味がないからだ。

しかし美女はどうだろう。
もうこの先は言うと私のイメージ低下にしかつながらないので
あえて言わない。
つまりナンパ師ならともかく私のような普通の男が知らない
美女に声をかけるのなんてそうたやすい話ではないのだ。。

あぁ。美女に声をかけるのがこんなに辛いとは思わなかった。
私はここにきて、本来のヘタレが炸裂してしまった。

私は気晴らしに果物を売っている
がっしりしたタイプのイケメンおじさんから
マンゴーを二つ買い、この辺りに美女がいるか聞いてみた。
おじさんは笑いだし、こんなとこに美女はいねーぞ!
ほら見てみ!と辺りを指差し始めた。

いやいや、失礼です。この人。

私は再び歩き始めた。果物屋からそう遠くないところで
ピンクの服を着た買い物帰りの女性を見つけた。
私には、ひとつ弱点があった。

ピンクを着ている女性が全員可愛く見えるのだ!!!

これは声をかけないといけない!
だってピンク着てるよ?
私は彼女とすれ違った。

私はこの時、この人とも、またどこかで歩いてたら
再び会えるだろうから今は声をかけないでもいいと一瞬思った。

いや、待てよ。
この人は買い物から家に帰ろうとしている。
家に帰ってまったりタイムに入ったら
写真はもう撮れないじゃないか!!!

私は急いで歩く向きを変え彼女に声をかけた。
すいません!私は日本人の観光客です・・。

彼女は初め戸惑っていた。
私が写真を撮っていいですか?と聞くと、
「はい」とも「いいえ」とも言わず困った顔でただ笑っている。
拙者、その笑顔はOKと見た!

私はカメラをかまえシャッターを押した。
なんとも意見の分かれそうな美人である。

彼女に名前を聞くと、彼女は「宝香さん」というらしい。
宝の香りとな。ついでに失礼なのは承知で
参考までに年齢を尋ねると「30うん才よ!」と
少し嫌な顔をされてしまった。

もう女性に年齢を聞くのはよそうと思った。
女性はいつだって敏感なお年頃なのだ。

私は写真を撮り終え少し安堵していた。
緊張したが、これを積み重ねていけばいいのだ。
よーし次行くぞ!と再び歩き始めた。

私は歩きながら考えていた。
美人が集まるところは一体どこだろうと。
そしてひとつの解答を得た。

化粧品屋の前である!

私はすぐに化粧品屋を見つけ、反対側のスーパーの前に腰掛けた。
化粧品屋に入る美女が化粧品を「物色」するなか、
私はその美女を「物色」しようという作戦である。
客のなかには、渋谷にそのままいそうなギャルまでいた。
チベットにもギャルがおんねんなぁ〜としみじみしていると
私の前を子連れらしき綺麗な奥さんが通りかかった。

美女だ!

美女であれば、子連れであろうと狼連れであろうと問わない私は、
一人目が成功した勢いそのままに追跡を開始した。
すると、その二人は小さな化粧品屋のような中に入った。
鍵を開けているからオーナーだろうか。

私はおそるおそる中に入り、挨拶をした。
私が紙を見せると奥さんは笑い、子供はきょとんとしていた。
子供と一緒に写真を撮らせてください!と
お願いすると、あっさりと許可をだしてくれた。

奥さんは吕太蓉さん、お子さんは卓玛青初ちゃん。
奥さんの左手薬指には銀色の指輪がキラーンと光っていた。

2人目成功だ!
目標は15人だからあと13人か・・。
途方もない数字に感じる。

一人目が30うん才で、
二人目もお子さんがいるからそれくらいだろう。
次は、もう少し若い子を狙おうと思った。

ある洋服屋を見ると、若そうな女性が働いていた。
顔などよく見えないが、客が引いたところで突撃してみた。
店内は狭く、うす暗い。暗いドンキホーテのようだ。
その女の子は店の奥で昼ごはんを食べていたのか
店の中でご飯を広げていた。
中国ではよくある光景だ。

KYなのは承知で紙を見せ写真を撮らせてくれませんか?というと
彼女は、にこりともせず、「ダメ」と言った。

ガーン。

連勝記録は2人までか・・。
私は、わかりました、ありがとうと言い店を出た。
あの様子は全拒否の様子だった・・。
まぁこういうこともあるよ。
気持ちを切り替えて、改めて3人目に行こうではないか!

すると前からチャン・ツィイーに似た髪の長い
女性が歩いてきた。しかも格好を見るに警察官だ!
よーし!警察官であろうと知るか!行ってやる!突撃!

えーと・・どこから話せばいいかな。
うーん・・少し遠目からの撮影だよね。
しかも正面の撮影じゃないよね。
名前なんてもちろん分からないね。



うん、これただの盗撮だよね!



・・・。

はい、私は平静を装ってますが、3人目に断られたことで
心は完全に折れています。

もう嫌です。無給で働くのは嫌です。
モチベーションがあがりません。

私はなんと情けない男なんだろう。
傷心気味の私はいつも行ってるスーパーに行った。
スーパーの店員が今日は一日何したの?と聞いてくるから
一日中、美女を探したと答えた。

いた?と聞くから「いた」とだけ答えた。
美女を探したという話をして、
目の前の女性を無視するのも失礼な話である。

私は、ところで君も美人だね!と嫌がる店員を撮ろうとした。
彼女は撮るまではすごく嫌がってたのに、
一度カメラを向けるとピース姿に早変わり。
まったく、女性はミステリアスだね。

私の美女探しの旅はこうして玉砕し幕を閉じた。


結論:美人谷にも美女はいるが、東京で探したほうが効率がいい。